出会う前のキミに逢いたくて
そのあと、オレは近くの喫茶店に移動した。


店先のショーケースには今どき滅多にお目にかかれない、フォークが浮いたナポリタンが飾られていた。


壁には古めかしい鳩時計。テレビより五分遅れている。


テーブルには灰皿、そして店名入りのマッチ箱。『タンポポ』というらしい。


地元に根づいているらしく、六つあるくすんだ木製のテーブル席はすべて埋まっていてる。


ぼんやりスポーツ新聞をめくりながら一杯税込600円のアイスコーヒーで1時間近く粘ると、昼の営業時間を終えた店長がようやく現れた。


単なる取り忘れか、それとも宣伝のため意図してそうしてるのか、店のロゴが描かれた前掛けをつけたままだ。


昼食がまだのようで、店長はエビピラフのドリンクセットを注文した。


店長の空腹が満たされ、ひとしきり昔話に花を咲かせ終えたあと、思い切って相談を持ちかけた。


< 241 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop