出会う前のキミに逢いたくて
そのときに話し声は聞こえなかった。

午前8時のマヤの行動は単独と考えていいだろう。

そのあと、今の連れの男と外で落ち合い、どういう流れか知らないけど、一緒にマヤの部屋に戻ってきたんだろう。

この野太い声の主がマヤのこの時代の彼氏ということなのか・・・

「よかったらお茶くらい飲んでってよ」

「いやいや。本当にいいよ。オレなんかに気を使う必要ないから」

お互い、どこか気をつかいあっている。

やりとりを聞く限り、2人はそんなに深い関係じゃなさそうだ。
どこか他人行儀だもの。

「遠慮しなくていいのに・・・」

「遠慮とか、そういうんじゃないよ。今一番つらいのは誰がどう考えてもマヤちゃん自身だろ。昨日もほとんど眠れてないんだろ。今は自分の身体を大事にしたほうがいいよ」

野太い声の男はどこまでもどこまでもマヤをかばった。

待ってくれ。

マヤの身に、何か良からぬ事態が起きたようだ。

「ありがとう・・・」

途中から言葉にならず、マヤは泣き出してしまった。

< 28 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop