出会う前のキミに逢いたくて
そして、一目惚れしてしまったオレは、長年貼られた奥手というレッテルをスパッと返上。

生まれて初めて、珍しく積極的に猛アタックをかけ、マヤも何となくそんな気分になる。

地球規模では小さいけど、オレにとっても大いなる奇跡。

それ以外のプロセスを踏んだとしたら、オレとマヤが付き合うことさえ危うくなるかもしれない。

奇跡はそう簡単には起きないもの。

とにかく、この時代のマヤと接触する気はなかった。

それは許されない。

でも、あの涙をスピーカー越しに聞かされると、傍観者ではいられないよ・・・。

そこで、涙の理由の手がかりを見つけにこの喫茶店へやって来たのというわけだ。

「はい、お待ちどう!」

マスターが威勢のいい声でカップを置いた。

白い湯気と香りが低い天井を彷徨う。

一口すすったあと、咳払いし、覚悟を決めて芝居を仕掛けた。

「あれあれ、今日はマヤちゃんは?」

なかなかうまくセリフがいえた。

尋ねると、マスターはスポーツ紙から視線を外した。

「あれ、お客さん、前にもいらしたことありましたっけ?」

不思議そうにオレの顔をまじまじと眺める。

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