出会う前のキミに逢いたくて
まあ、いたのかもしれないけど、特に高校野球マニアってわけじゃないから、そんな控え投手のことまでは知らねえよ。

「・・・・・・いや、覚えてませんね」

「いたのよ、実は私、こう見えて、高校野球が大好きなのよね~」

村上さんはそこからしばらく高校野球への熱い思いを語り始めた。

基本的に本筋とは関係ないので割愛させてもらうけど。
なんでも、お父さんの影響で高校野球にハマったそう。
夏の大会は地区予選からチェックしていて、仕事のある平日はビデオにとってまで見ているそうだ。
色んな趣味があるもんだな。

「中野くんの控え投手で、今は帝都リーグのA大学に通ってる原田くんって子がいるの。牧田さんの部屋に遊びに来てる男の子は原田くんで間違いないわ」

村上さんはどこか得意げだ。

話し終えた瞬間、八重歯に加え、メガネの奥がキラリと光った気さえしたもの。

かなり信憑性のある情報と考えていいかもしれない。

あの野太い声の男が原田くんという子なのかもしれない。
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