出会う前のキミに逢いたくて
それとも、原田くんとマヤの共通の知り合いなのだろうか。

恐らく、あの野太い声の男も野球部なんだろう。

そうか、マヤはオレと付き合う前は大学の野球部員と付き合っていたのか。

ふたたび激しいジェラシーの炎が全身を駆け巡った。

あと2ヶ月足らずで、マヤはその野球部員と関係をもつ。

ガラス細工のように繊細なマヤの身体を、野球で鍛え上げた筋肉の塊が覆いかぶさる様子を想像する。

・・・泣きそうになった。

「あら、どうしたの?」

やばい、感情の乱れを村上さんに悟られてしまったようだ。

さっきまで寒いと感じていたはずなのに、体が火照り、身体の隅々が燃えるように熱くなった。

「何でもないです」

何でもないはずはないが、虚勢を張るしかない。

「本当に大丈夫?」

「だ、だ、大丈夫です」

何としてでも原田くんに会いたい。

そして、マヤとの関係を確かめたかった。

こうしちゃいられない。

こうしてる今も2人の関係は日に日に深さを増していくはずなのだから。
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