出会う前のキミに逢いたくて
開いたページの脇に、マッチ箱くらいの、それはそれは小さな広告を見つけた。

同誌の編集スタッフ募集のお知らせだった。

・・・・・・これは使えるかもしれない。

うん、絶対使える!

編集部に潜り込めば、直接、原田くんを取材する機会が得られるかもしれないじゃないか。

彼がどんな人物なのか。

そして、マヤとの将来をどう考えてるのか。

マヤ自身は今何を考えてるのか。

彼を通して探るのだ。

よし、この手でいこう!

この手でいくんだ!

指を鳴らし、雑誌を持ったままレジに走った。

そのとき、背後から人が近づいてきた。

その人はオレの横に並んだ。

色白の手が、平積みされた雑誌の山に伸びる。

その人は、同じアマチュア野球雑誌を手に取った。

指先にラインストーンのネイルが輝いている。

なぜか懐かしい香りがした。

どこかで嗅いだことのある香水。

なぜか心臓の鼓動が激しくなる。

本能的に。
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