出会う前のキミに逢いたくて
けど、すぐに冷静になり、考え直し、強い印象を与えてはいけないと悟った。

オレとマヤは来春、出会うんだ。

そのときお互い「初めまして」と声を掛け合うんだ。

そうしないと未来が変わり、歴史をゆがめてしまう恐れがある。

視線を合わすことのないよう、オレは体をマヤとは反対側にそらした。

店内のBGMが天井から降ってくる。

去年、ヒットした曲。

そのリズムをなぞるように、ドクドクと心臓の鼓動が激しく暴れる。

なんてワンパクなんだよ、オレの心臓。

しばらくすると、後ろからしくしくという泣き声が聞こえた。

・・・・・もしかして。

・・・・・恐る恐る振り返ってみる。

やはり泣いていたのはマヤだった。

原田くんの載ったページを広げたまま、しくしくと。
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