出会う前のキミに逢いたくて
でも、スポーツ誌の面接を受けに来るほとんどの人が、今のような志望理由を語るんだろうなぁ。

案の定というべきだろうか、副編集長はオレが熱弁をふるってる間も表情ひとつ変えず、おもしろくなさそうに腕組みして、あさっての方向を向いていた。

耳の後ろを何度もかいている。

「野球経験は?」

「もちろんあります」

「どこを守ってたの?」

「それは日によりますね」

「へええ。ユーティリティプレーヤーだったんだね」

「ええ。といっても、ゲームの世界の話ですけれどね」

「はっ?」

副編集長が怖い顔をする。

やはり冗談は通じないらしい。

「じゃあ、やってみたい企画は何かある?」

あくびをかみ殺して向こうが尋ねてきた。

よし、狙い通りだ。

一呼吸おいたあと、オレは用意しておいたセリフを語って聞かせた。

「帝都リーグに興味があります。大学野球はやっぱり帝都リーグだと思うんです。
華のある六大学リーグに比べると、どうしても地味な印象をぬぐえませんが、実力では負けてないと思うんです。実力のある逸材がゴロゴロいますからね」

というと、見る見るうちに副編集長の表情が変わった。

太陽のように明るく輝く。

瞳をキラキラさせ、まるで少年のようである。

こっちが困惑するほどの、あまりの変貌ぶりだった。

「キミもそう思うの!? いいね~。わかってるね。通だねぇ」

オレの手を握らんとする勢いで顔をぐっと近づける。

「は、はい。ボクも帝都リーグ派ですから」

オレは本心でそう言ったわけじゃないんだけどね・・・。

ごめんなさい。ウソついちゃって。
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