出会う前のキミに逢いたくて
「いやあ、ホントにボクなんかでいいんですかねぇ」

原田くんはベンチに腰掛けるなり、自虐的なセリフでオレを困らせた。

オレとしては、バンバン喋ってもらって、どんどん情報を仕入れたいところである。

「いえいえいえ、ご謙遜なさらずに。うちの副編集長が前々から原田さんのインタビューを載せたいと申しておりまして…いえ、副編集長だけじゃありません。編集部みんなの総意で決まった企画です。せっかくの休憩時間にお邪魔して申し訳ありません」

平身低頭に答え、作ってもらったばかりの名刺を渡した。

原田くんは名刺を受け取ると、ろくに見もしないでズボンのポケットに突っ込んだ。

それだと確実に折れ曲がるじゃん。

そんな細かいことなど気にもとめない様が体育会系っぽく、また、男らしくも見える。

ふつうに考えれば失礼な行為なんだけど、原田くんだとなぜか許せてしまう。

アスリートだけに許される特権なのだろうか。

「ところで、どんなお話を聞きに来られたんですか?」

「もちろん、まずは野球です。
今秋の大会に向けて、どの大学も最終調整の段階に入っていますよね。
いやあ、楽しみです。ひとりのファンとして。
今回の企画はその練習のレポートと主力選手のインタビューなんですよねー」
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