出会う前のキミに逢いたくて
タオルで顔の汗を吸い取りながら、原田くんは頷いた。

「何となくイメージはつかめました」

最初に釘をさしておくことにする。

「それから、時間に余裕があったらプライベートなことも伺いたいです」

「へええ。たとえばどんなことですか?」

「練習と練習の合間にどんなことで気分転換なさってるのかとか」

「趣味とかですか?」

「そうですね」

「う~ん。そんなの載せて読む人いるんスか?」

原田くんは自嘲気味に笑った。

「私どもも新たな試みです」

ポケットからメモとペン、小型のレコーダーを出す。

いよいよ、取材開始。

印象的な回答をメモにとり、会話のすき間ができたら深くつっこんだり、次の質問をぶつけたり…。

インタビューはスムーズに進んだ。

オレ、意外とこういうのうまいのかも。

ベンチにはオレと原田くんの二人しかいない。
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