出会う前のキミに逢いたくて
<マヤ>1年前の秋
何も知らないスタンド
秋の陽光に照らされたマウンドで、A大学のエース、原田マサキが一つ大きく息を吐いた。
苦しそう。
けど、目はまだまだ死んでない。
彼の動きをひとつ残らず見逃すまいと、わたしは一塁側スタンドで目を皿のようにしていた。
ハンカチを握る手は、とっくにぐっしょりと湿っている。
搾ればぽたぽたとしずくがこぼれそうなくらいに。
キャッチャーの前田くんがマサキに「あとひとりだ。落ち着いていくんだ」と熱いまなざしで指示を与えている。
それをかき消すかのように、向かいの三塁側スタンドに陣取る応援団が最後の望みを信じて、声援をグランドに降らせていた。
一打同点という緊迫の場面だ。
ここでヒットが出れば試合は振り出しに戻ってしまう。
マサキが抑えれば、見事にA大学は秋の本大会にコマを進めることができる。
マサキの表情はいつもと変わらない。
三塁の同点ランナーがジリジリとリードをとっても、敵チームのベンチから子供じみた野次が飛んでも、ひたすらクールに、目の前の打者を睨み返すだけ。
苦しそう。
けど、目はまだまだ死んでない。
彼の動きをひとつ残らず見逃すまいと、わたしは一塁側スタンドで目を皿のようにしていた。
ハンカチを握る手は、とっくにぐっしょりと湿っている。
搾ればぽたぽたとしずくがこぼれそうなくらいに。
キャッチャーの前田くんがマサキに「あとひとりだ。落ち着いていくんだ」と熱いまなざしで指示を与えている。
それをかき消すかのように、向かいの三塁側スタンドに陣取る応援団が最後の望みを信じて、声援をグランドに降らせていた。
一打同点という緊迫の場面だ。
ここでヒットが出れば試合は振り出しに戻ってしまう。
マサキが抑えれば、見事にA大学は秋の本大会にコマを進めることができる。
マサキの表情はいつもと変わらない。
三塁の同点ランナーがジリジリとリードをとっても、敵チームのベンチから子供じみた野次が飛んでも、ひたすらクールに、目の前の打者を睨み返すだけ。