出会う前のキミに逢いたくて
あくまでも今日は予選に過ぎない。

その証拠に、スタンドのほとんどは空席だった。

それでも、内野席を中心に1000人近くが詰め掛けてる。

1000人もの視線が集まるグランド。

巨大な舞台で、わたしを含めた3人の人間しか知らない『秘密』があった。

もしかしたらマサキにとって、この大会が最後になるかもしれないのだ。

一週間前、耳を疑うような衝撃的な知らせを受けた。

「もしもしマヤ」

「マサキ・・・どうだった?」

「うん・・・」

それから先はあまりよく覚えてない。

体の力が抜け、電話を持つこともままならなかった。

気がつくと、ドラマで見る悲劇のヒロインみたいにヒザから崩れてた。

ぶつけたヒザと神経が悲鳴をあげてるんだけど、それどころじゃないという感じ。

そのことだけを何となく、うっすらと覚えてる。

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