出会う前のキミに逢いたくて
音楽がかかってなかったら、まるでお通夜状態だ。

曲がフェイドアウト、次の曲が流れ出るまでの間の無音がたまらなく寂しい。

まるで、音のない世界に迷い込んでしまった2人みたいである。

「あのさ・・・」

口火を切ったのはマサキのほうだった。

バカバカバカ・・・。アホアホアホ・・・。

心の底から申し訳ないと思った。

わたしが先に声をかけるべきじゃないかよ。

だってだって、本当にショックなのは彼のほうなんだから・・・。

わたしなんて、まだまだだな。

人として、全然できてないよ。

不出来な自分に、無性に腹が立った。

自分で自分を心の中で罵る。

一方で、私なんかより何十倍、いや、何百倍も立派なマサキをあらためて尊敬した。
「今度の大会でとりあえず、野球は一区切りだな」

「うんそうだね。残念だけど、仕方がないよね」

会話が続かず、また部屋がしんと静まり返る。

わたしが次の話題を用意できないせいだ。

全部わたしのせい。
< 78 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop