出会う前のキミに逢いたくて
「今は体調を完全に治すことが先決だもんな」

医者から思いがけない勧めを受けたのは２週間前だった。

「精密検査してみましょうかね」

１週間後、助言通り検査を受け、今日その結果をマサキは聞きに行ったのだ。

「わたしも行っていいかな？」

彼女として当然の提案だ。

でも、「いいよ。オレひとりで」と彼は拒否した。

寂しさがなかったといったらウソになる。

しかし、彼は家族の付き添いも断り、ひとりで面談に行ったのだ。

一方で。

もしも良くない知らせだったらさすがに動揺しちゃうだろ？

びびっちゃうだろ？

足が震えちゃいそうだろ？

涙の一しずく、二しずくくらい流してしまうかもしれないだろ？

そんな弱い自分を誰にも見せたくない。

マサキが付き添いを拒否した理由は容易に想像できた。
< 79 / 261 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop