出会う前のキミに逢いたくて
長い沈黙・・・
電話だというのに。

走り去る車のエンジン音。

遠くではクラクションが騒がしく鳴ってる。

「やっぱ・・・ショックだよ」

前田くんがようやく口を開いた。

そこには溜息とやるせなさが混じっていた。

「ショックだよね・・・」

わたしもおうむ返しするのがやっとだった。

病気が発覚してからずっと思考が停止したままだもの。

「オレ、今度の大会は何が何でも優勝したい。
いや、優勝するよ。絶対。
それがあいつにとって、最高の薬になると思うから」

いつもは寒いギャグばかりの彼だけど、今日は真剣だった。

わたしは胸が静かに熱くなった。
< 90 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop