出会う前のキミに逢いたくて
信号が青に変わる。

足止めされていた歩行者たちが一斉に歩き出す。

わたしもその人たちに背中を押されるように前へ出た。

どこか自分の意志じゃないみたい。

誰かに操られてるようだ。

「マサキも同じことを考えてると思うよ。
悔いを残すことなく、この大会に全力でぶつかって、そしてみんなと優勝を分かち合いたい。
そして、今度は病気と闘う。そう思ってると思う」と私。

でも、そう言っておきながら、もう1人の私が
「そんな生易しいことじゃないんだよ!」と激しい口調でつっこみを入れていた。

大病と立ち向かうことが、どれほど大変なことか。

エネルギーを消耗することか。

勇気が求められることか。

闘うのはわたしじゃない。

マサキだ。

それなのに、訳知り顔でマサキの気持ちを代弁してる自分。

わたしって何なの・・・
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