出会う前のキミに逢いたくて
偉そうなわたし。

なにもできないくせに。

口先だけいっちょ前。

自分に憤り、思わず涙が出そうになった。

前田くんもきっと似たような心境なのだと思う。

「また電話するから・・・」

彼もまた、気持ちの整理がつかないに違いない。

ハンカチを出し、目頭を押さえた。

店先の看板が視界に入る。

涙をこらえて、店の窓をのぞくと、早番のおばさんと目が合った。

おばさんはなぜか、窓の外の、遠くのほうを見つめていた。

会釈しながらドアをくぐった。

エプロンをつけ、カウンターに入った途端、おばさんが怪訝な顔でいった。

「さっきさぁ、マヤちゃんの背後にさぁ、変な男が立ってたわよ」

「変な男・・・ですか?」

想定外の不吉でイヤな忠告。

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