出会う前のキミに逢いたくて
「その変な人って具体的にはどういう人ですか?」

「黒いキャップを不自然なくらい深くかぶってたわよ。
なんかオドオドした感じで。挙動不審とはああいうことね」

「かなり気味悪いですね」

「うん。まるでニュース番組に出てくる防犯カメラに映る容疑者みたいだったわよ」

「こわっ」
身震いした。

「今の世の中物騒だからね。何が起きるかわかりゃしない。気をつけなさいよ」

「はい。でも私、誰かにつきまとわれるようなことしたかな」

「マヤちゃんかわいいから、男をいっぱいいっぱい泣かしてるんじゃないのかしらね」

「まさかそんな。あり得ないですよ」

「いいオトコがいたら、たまには私にもまわしなさいよ」

彼女はガハハと喉の奥を全開にして笑った。

「ハハハ」
愛想笑いするわたし。

オヤジギャグという言葉に対してオバサンギャグというジャンルがあるとするなら、まさしく今のがそれだろうな。

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