【短編】純情彼氏
コンコン一
部屋のドアを叩くと中から
「どうぞ」と声が聞こえて
あたしは、ドアノブを回した。
なんだか恥ずかしくて、俯きながら
「晃…ごめんね?服まで借りちゃって…
制服どうしたらいい?」
と、晃に声をかけた。
だけど、いつまでたっても
晃からの返答はなくて
あたしは、俯いていた顔をあげて
晃を見た。
晃は、しっかりとあたしを見ていて、
だけど、目は見開いたままだった。
「あき…きゃっ!」
名前を呼ぼうとしたのに
あたしは、また晃に腕を引っ張られて…
目の前が真っ暗になった。
だけど、何かに包みこまれていて
なんだか、温かかった。
晃に抱き締められていると気付くのには
少し時間がかかった。