蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
慧はいつもの三割増しの、にこやかな笑顔で言う。
・・・絢乃から見るとなんだか胡散臭いような気もしなくもないが・・・。
雅人は慧と絢乃をしばし見た後、口元に笑みを浮かべて言った。
「・・・では俺は、そろそろ失礼する」
「はい。・・・北條さん、本当にありがとうございました」
絢乃は車に乗り込む雅人に、深々と頭を下げた。
その横で、慧も頭を下げる。
やがて車にエンジンがかかり、ゆっくりと動き出す。
大通りの方へと消えていく黒い車体を、絢乃はじっと見つめていた。
───雅人の車が消えた後。
慧はその顔からすっと笑みを消し、訝しげな表情で腕を組んだ。
「・・・」