蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「絢乃ちゃん、これから昼食?」
「・・・あ、はい」
「偶然だね~。オレもこれから昼食なんだけど。一緒にどこか行かない?」
一緒に、って・・・
突然の誘いに、絢乃は目を丸くした。
けれど絢乃は昼食の後、会議室の準備をしなければならない。
それに、慧も『あいつには極力近づくな』と言っていた気がする。
絢乃はしばしの沈黙の後、口を開いた。
「・・・あの、すみません。昼休みにちょっと用事があって・・・」
と言った絢乃だったが。
卓海はその目をすっと細め、唇の端で笑った。
・・・その、いつもとどこか違う微笑み。
ん? と思った絢乃に、卓海はいつもと同じカルい口調で言う。
「そ? ・・・じゃあ昨日のこと、部内に言いふらそうかな~」
「・・・へ?」
「ホラ昨日、軍曹と一緒の車で帰ったでしょ? ・・・見ちゃったんだよね、オレ」