蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
卓海はくすくす笑いながら、じっと絢乃を見つめる。
しかしその目は全く笑っていない。
絢乃はなぜか、背筋がすーっと冷たくなるのを感じた。
・・・なんだろう、これ。
と呆然と卓海を見つめる絢乃の前で。
卓海の顔から、すっと笑みが消えた。
かわりに、その端整な顔に刻まれたのは・・・
絢乃が見たことのない、黒く凶悪な笑み。
「・・・生意気なんだよ、お前。グダグダ言わずについてこい」
───は?
とポカンとした絢乃の腕が、突然ぐいと掴まれる。
ちょうどその時、運がいいのか悪いのか、チーンという音とともにエレベーターが到着した。
ポカンとしたままの絢乃を、卓海はぐいっとエレベーターに引きずり込む。
トン、とエレベーターの壁に背を押し付けられ、絢乃は呆然と卓海を見上げた。
そんな絢乃に、卓海はうっすらと笑い、言う。
「・・・お前、いつまで間抜けなカオしてんの?」
「・・・え、え、あの・・・」