蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】



12:50。

大会議室に入った絢乃は、放心したまま、ロボットのように椅子を並べていた。

・・・あれから、卓海に外に連れて行かれて・・・


「・・・」


───ダメだ。

今それを考えたら、何もできなくなる。

絢乃はふるふると考えを振り払うように首を振った。

・・・というかこんな精神状態で会議に参加なんて、大丈夫だろうか。

絢乃は今、自分が抜け殻のようになっていることを自覚していた。


───信じられない・・・。


まさか、卓海があんな二面性を持っていたとは・・・

いや、二面性というか、あれはもう人格異常に近い。

普段、女性社員達に見せていたあの軟派な態度は・・・何だったのだろうか。


慧が近づくなと言った理由も、今ならわかる。

というか身をもって痛感してしまった。


───あれは、鬼だ。


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