蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
まさか同じ社内に鬼が生息していたとは・・・。
思い出すだけで背筋が震える。
あと10分後に卓海がこの会議室に来るというだけでも死にそうに恐ろしい。
とビクビクしながら椅子を並べていた絢乃に、横から声がかかる。
「どうしたんですか、秋月先輩?」
「・・・黒杉くん・・・」
「鬼の本性を見た、という顔をしていますよ?」
純也は言い、唇の端に笑みを浮かべた。
・・・その、眼鏡の奥の楽しげな瞳。
絢乃は思わず、純也の両肩をがしっと掴んでしまった。
「ねぇ、黒杉くん! 黒杉くんは知ってたわけ? あいつの本性を!?」
「・・・社内で目上の人間をアイツ呼ばわりするのはどうかと思いますが」
「知ってたなら何で言わないの───!?」