蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
5.選択の余地ナシ?
13:00。
絢乃は端の方の席に座り、部会に参加していた。
配られた資料に目を通しながら、部長や課長達の話を聞き、要点をチェックする。
・・・が。
「・・・」
ここまで部会に集中できないのは、初めてだ。
というか絢乃にとっては部会どころではない。
見ると、卓海は最前列でいつもの様子で資料をめくっている。
香織はそんな卓海に熱のこもった視線を投げているが、今となってはそれを見るだけでも背筋がぞっとする。
「・・・というわけで、明日のセミナーには、運用課の秋月も参加すること」
絢乃はぼーっとしながら資料を眺めていたが、部長の言葉にはっと顔を上げた。
・・・なんか今、自分の名前が呼ばれた気がする。
見ると、ホワイトボードの『卸業者向けセミナー参加者』の欄に自分の名前が載っている。