蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
『卸業者向けセミナー』は明日、有明で行われる卸業者の社内SEを対象としたセミナーだ。
第一開発課と第二開発課が参加するらしい、というのは聞いていたが・・・。
首を傾げた絢乃に、部長の澤井がコホンと咳払いをして続ける。
「データベース運用の部分について、しっかり聞いてくること。ただ、もう社用車がないな・・・」
「・・・」
「秋月。北條か加納の車に、一緒に乗せてもらえ」
澤井の言葉に、絢乃は目を見開いた。
・・・一緒の車に、って・・・
澤井は雅人と卓海の顔を見、口を開く。
「確かそれぞれの部から、2人づつ参加だったな?・・・であれば、秋月一人ぐらい増えても大丈夫だろう。秋月、どちらがいい?」
と言った澤井の言葉に。
絢乃は条件反射のごとく言った。
「北條さんの車でお願いします」
「・・・?」
「北條さんの車がいいです。北條さんの車に乗せてください」