蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
───部会の終了後。
絢乃は会議室の片づけを終え、部屋を出た。
会議室の鍵を閉め、鍵を返すべく総務課の方へと足を向ける。
・・・と、そのとき。
「・・・お前がそこまであいつを慕っていたとはな。知らなかったよ」
・・・その、ドスの効いた低いテノールの声。
びしっと背筋を強張らせた絢乃の前に、柱の陰から卓海が姿を現した。
その顔に刻まれた、性悪な微笑み。
なまじ顔立ちがいい分、その迫力は桁違いだ。
ヒィと息を飲んだ絢乃に、卓海はククッと笑って言う。
「お前、ひょっとしてマゾ? ・・・あいつ、どう見てもサドだろう?」
「・・・・っ!?」
・・・っていうかよりによってアナタがそれを言いますか?
と言いそうになり慌てて口を塞いだ絢乃に、卓海はうっすらと笑って言う。
「・・・なに、何か言いたげだな、お前?」
「・・・いっ、いえ・・・っ」
「アイツに比べたら、オレなんて優しい方だろ。・・・というわけでお前、この後第二に来い。お前にぴったりの仕事を用意してやるよ」