蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
那須には二人の母方の祖母が住んでおり、二人は毎年、盆と正月に祖母に会うため那須に行っている。
8月は、絢乃の夏休みと土日が重なればそのまま周辺を観光したりするのだが・・・。
夏休みは8月中に、自分の都合の良いところで三日間、取ることができる。
絢乃はカレンダーを思い出しながら言った。
「・・・明日、会社で確認してみるね?」
「うん、よろしく、アヤ」
慧は言い、ゆっくりとソファーから立ち上がった。
・・・ふわりと漂う、甘く柔らかいウッドノートの香り。
慧は香水は使わないが、昔から髪質が柔らかいため外国産の特殊なシャンプーを使っている。
そのシャンプーの香りがいつのまにか慧の香りとなり、慧の傍にいるとどこか甘い香りがする。
慧はキッチンに行き、二人分のお茶とお菓子を木製のトレーに乗せて戻ってきた。
ちなみに今日のお菓子はパウンドケーキのようだ。
「・・・アヤ、何かドラマでも見る? それともゲームでもする?」
「え、いや、特には・・・・」
「じゃあ、先週録った『オペラ座の怪人』を観てもいいかな? アヤも一緒に観る?」