蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
慧の言葉に、絢乃は少し考えた後、コクリと頷いた。
慧は古今東西のいろいろな映画を見ており、映画に対する造詣も深い。
・・・前回のキラートマトはちょっとアレな感じではあったが。
慧は絢乃の隣に座り、DVDデッキを起動した。
「『オペラ座の怪人』は今確か、赤坂で劇場版をやってるよね。いつか劇場で観てみたいな~。おれ、この話けっこう好きなんだよね」
「え、そうなの?」
「特にこの『怪人』がさ。おれとしては感情移入しやすいっていうか・・・」
慧は手早くDVDのリモコンを操作する。
絢乃はそれを見ながら、胸の中に何ともいえない感情が湧き上がってくるのを感じた。
絢乃は『オペラ座の怪人』を観たことはない。
それにしても、『怪人』に感情移入しやすいって・・・
キラートマトの件もそうだが、慧の感覚はやはり常人とはどこか違うのかもしれない。
などと思った絢乃に、慧は眉を上げ、苦笑して言った。
「・・・あのね、アヤ。『怪人』って、『怪しい人』って意味じゃないからね?」
「・・・え、そうなの?」
と驚いた絢乃に。
慧はリモコンの再生ボタンを押し、はぁと口を開く。