蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
四章
1.予想外のランチ
翌日。
絢乃は雅人が運転する社用車の助手席に乗っていた。
本当であれば第一開発課の鈴木さんも一緒に乗車する予定だったのだが、有明で別の用事があるらしく、そこからセミナー会場に直行するらしい。
絢乃は畏まった様子で助手席のシートに背を埋めていた。
先週は雅人の車だったため雅人が運転していたが、今日乗っているのは社用車だ。
本来であれば、課長の雅人ではなく、部下の絢乃が運転するのが筋なのだが・・・。
「すみません、北條さん。本当は私が運転しなければならないのに・・・」
「・・・お前、免許は持っているのか?」
雅人の言葉に、絢乃はこくりと頷いた。
「はい。取得してから7年間、運転したことがないのでペーパーゴールドですけど」
「・・・お前に運転させたら、とんでもない所に連れて行かれそうだな・・・」
雅人は運転しながら、ぽそりと呟くように言う。
絢乃は首を傾げた。
「・・・え? とんでもない所?」
「生身の人間が行けない世界とでも言えばいいか?」