蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
雅人はくすくすと笑いながら言う。
・・・雅人がこういう笑い方をするのは珍しい。
いつもより少し柔らかい、その端正な横顔にドキッとした絢乃だったが、言われた言葉の内容に気付いてむっと眉根を寄せた。
「ひどいです、北條さん・・・」
と言った絢乃の隣で、雅人はさらに目を細めて笑う。
「・・・まぁいい。着くまでには少し時間がある。ゆっくりしていろ」
「・・・はい・・・」
絢乃は頷き、窓の外を見た。
雅人の運転はとても丁寧で、手慣れた感じだ。
ちなみに、絢乃の家には車はない。
たまに仕事で慧が車を使うことはあるが、その場合は駅前のレンタカーで都度借りているらしい。
慧の運転もそれなりに丁寧ではあるが、雅人の運転はさらにその上を行く丁寧さだ。
「ところで、お前。昼飯はどうする?」