蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
雅人の言葉に、絢乃はダッシュボードの上に置かれた時計を見た。
・・・12:15。
セミナーが13時からなので、12時に会社を出てきたのだが・・・昼食のことは考えていなかった。
しかし今日はこれから長丁場だ。
昼食を抜いてしまうと、午後がキツいだろう。
「・・・途中で、食べた方がいいですよね?」
「そうだな。台場の辺りで寄ることにしよう」
雅人は言い、胸ポケットから携帯を取り出した。
ちょうど信号待ちで、車は止まっている。
雅人は携帯を開き、手早くボタンを押した。
「・・・北條だ。予約を入れたい。今から10分後だ」
『・・・』
「ああ、二人だ。よろしく頼む」
雅人は短く言い、パタンと携帯を閉じた。
と同時に信号が青に変わり、車が走り出す。
絢乃は助手席から雅人の横顔をちらりと見た。