蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・ひょっとして、行きつけのお店があるんですか?」
「行きつけと言うか、親族が経営している店だ。多国籍料理だが、お前、大丈夫か?」
「・・・あ、ハイ。大丈夫です」
多国籍料理だとキュウリ出現率は意外と高かったりもするが、昼飯を食いっぱぐれるよりはマシだ。
それに多国籍料理は普段あまり食べないので、少し楽しみでもある。
・・・やがて、車は店の前に到着した。
台場駅から少し行ったところにある、白い外装の大きな建物。
予想外のその大きさと、外見からでもわかる格調の高さに、絢乃は目を見開いた。
「・・・あの・・・ここ、ですか?」
「ああ。・・・入るぞ」
雅人に促され、絢乃は店内へと入った。
入るとすぐ、黒い制服を着た店員が恭しい様子で頭を下げた。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました、雅人様」
・・・雅人様?
と驚く絢乃の前で、店員は笑みを浮かべ、店の奥へと二人を案内する。