蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】



通されたのは、角部屋の日当たりのよい個室だった。

───はっきり言って、相当ランクの高い部屋だ。

そしてテーブルの上には既に料理が並んでいる。

ランチではあるが、前菜からメインまで一通りそろった、ちゃんとしたコース料理だ。

・・・自分の財布の中身が心配になってくる。

と青ざめた絢乃に、雅人はくすりと笑った。


「心配するな。今日は俺の奢りだ」

「・・・え?」

「というか、ツケだがな。この店は俺の家族や親族もよく利用している。味は確かだ、安心しろ」


言い、雅人は優雅な所作で椅子に座った。

絢乃も恐る恐る、その向かいに座る。

・・・こうして雅人と食事をするのは初めてだ。

障害対応などで夜遅くなったとき、フロアの隅で缶コーヒーを片手に一緒に休憩したりすることはたまにあったが・・・。

そもそも、雅人と外食すること自体が初めてだ。

絢乃は箸を手にし、前菜のサラダを口に運んだ。

・・・食べたことのない味つけだが、とても美味しい。

絢乃は思わずパクパクと食べてしまった。

そんな絢乃の前で、雅人も優雅な箸捌きでサラダを抓む。

───明らかに育ちがいい、とわかるその箸捌き。


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