蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・どうした、秋月?」
「あ、いえ。・・・すごく美味しいです」
絢乃はその大きな黒い瞳を輝かせ、言った。
サラダだけではなく、どの料理も品の良い味付けで、素材の味が生きている。
美味しそうに食べる絢乃を見、雅人の眼鏡の奥の瞳がかすかに和む。
「そうか。・・この店は新宿にも支店がある。機会があれば、また連れて行ってやろう」
「え、本当ですか?」
「機会があれば、だがな?」
くすり、と雅人は笑った。
・・・いつになく柔らかい、その微笑み。
絢乃は思わずドキッとしながら、テーブルの脇に置かれたグラスに手を伸ばした・・・。