蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
13:00。
絢乃はセミナー会場の真ん中あたりの席で、渡された資料に目を走らせていた。
卸業者の社内SE向け、というとかなり人種は限られるような気がしていたが、セミナー会場には100人ほどが集まっている。
グランツ・ジャパンに割り当てられたのは、中ほどの席だった。
ちなみに絢乃の左隣には雅人が、右隣には卓海が座っている。
絢乃は無意識のうちにぐっとペンを握りしめた。
・・・なんだか生きている心地がしない。
特に右側は・・・。
「・・・というわけで、卸売上と店舗仕入の相殺を・・・」
セミナーは資料に沿って、順調に進んでいく。
絢乃は前に映し出されたプロジェクターを見ながら、手元の資料に要点をメモした。
・・・セミナーは17時まで続く。
途中休憩はあるが、終了するまでは基本的に退場できない。
絢乃は自社システムの仕組みを思い出しながら、講師の話を聞いていた。