蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
2.鬼の罠
17:10。
セミナーが終わり、絢乃はバッグを片手に会場を出た。
御手洗いに行き、軽く化粧直しをして身支度を整える。
そして廊下に出て雅人の姿を探していた、そのとき。
「・・・お、いた、絢乃ちゃん」
その聞き覚えのある爽やかな声に、絢乃はびくっと背筋を強張らせた。
・・・見ると。
卓海が鞄を片手に、にこやかな笑顔で絢乃の方へと歩み寄ってくる。
卓海の横には第二開発課の橋本さんの姿もある。
「北條さんは別件でこのまま出かけるらしいから、絢乃ちゃん、一緒に帰ろうか?」
「・・・・・へっ?」
絢乃は目を見開いた。
・・・そんな話、雅人は一言も言ってなかった気がする。
というか、会場を出るときに『15分に出るぞ』と雅人に言われたのだが・・・。