蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】



17:20。

絢乃は助手席で体を縮こまらせていた。

・・・なぜ、こんなことになっているのか。

運転席では、卓海がいつもの笑顔でハンドルを握っている。

そして後部座席には、絢乃より2年先輩の橋本さんが座っている。


『・・・あの、あたしっ、後部座席でいいですからっっ』


と乗る前に必死で主張した絢乃だったが、


『橋本は品川で降りると言ってるから、橋本が後部座席の方がいいよ。絢乃ちゃんは助手席に座って?』


と卓海に言われ、押し込められるようにして助手席に座らされた。

・・・まるで針のムシロだ。

もちろん橋本さんは卓海の裏人格は知らない。


やがて車は品川駅に着いた。

お先に失礼します~、と言って橋本さんは車を降りていく。

その拍子に、絢乃もこっそりとシートベルトを外そうとしたが・・・。

その手を、ぐっと卓海が横から掴んだ。


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