蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・なに、お前。オレをシートベルト違反で突き出そうとでもしてるの?」
「・・・・っっ」
「お前、自分の立場わかってる? ・・・一度ガツンと教えなきゃダメかな、これは?」
卓海は目を細め、うっすらと笑う。
絢乃は必死にぶんぶんと首を振った。
・・・逃げようと考えた自分が間違っていた。
掴まれた手が、じわりと熱い。
その手の熱さと、かすかに漂う甘いフゼアの香りに、なぜか胸がドキッとする。
卓海はそんな絢乃を楽しげに見た後、手を離し、ゆっくりと車を発進させた。
「絢乃。・・・今日は夕飯は不要だとメールしとけ」
「・・・え?」
突然を名前を呼ばれ、絢乃は目を見開いた。
───今、呼び捨てにされた気がする。
驚いた絢乃に、卓海は舌打ちしながら言う。
「アイツにメールしとけって言ってんだよ。早くしろ」
「・・・」