蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
後ろで卓海が呆れたように言う。
慧は絢乃の頭を撫でたまま、唇の端でくすりと笑った。
「・・・アヤを送ってくれたことは礼を言うよ。ではお帰り願おうか?」
「・・・早いな、おい」
「あと。今後、アヤを連れ出すときはおれの許可を取ること。秋月家の家長として、おれはアヤを監督・保護する責任があるからね?」
「あのな、今は平成だぞ? さすがに時代錯誤じゃねぇか、それは?」
卓海はさらに呆れたように言う。
しかし慧は目を細め、うっすらと笑って卓海を見た。
「時代錯誤で結構。アヤはおれの妹だ。ヘンな虫を近づけさせるわけにはいかない」
「・・・虫って、おい・・・」
「さ、行こうか、アヤ?」
慧はいつになく強引な様子で絢乃の手を取る。
・・・その、力強い手。
絢乃は慧の様子に驚きながらも、慧に引かれるまま玄関の方へと歩き出した。