蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
<side.卓海>
───マンションを出た後。
卓海は新宿方面へと車を走らせながら、先ほどの絢乃と慧の姿を思い出していた。
あの二人の姿を思い出すと・・・胸の中で、何かがひっかかる。
それが何なのか、よくはわからないのだが・・・。
「・・・・」
・・・別に自分が気にすることではない、とは思う。
絢乃に本性を見せたのは、その方が何かと楽しめそうだと思ったからだ。
女は、あくまで自分が楽しむための道具でしかない。
絢乃ももちろん、その一人だ。
そして道具は、長く遊ぶためにはちゃんとメンテナンスする必要がある。
今日、絢乃を夕飯に連れて行ったのもその一環だ。
───昨日。
『お願いしますっ! 北條さんの車に乗せてくださいっ!!』
と部会の場で叫んだ絢乃を見、卓海はメンテナンスの必要性を痛感した。
・・・あんな大勢の前で、まさかあそこまで主張されるとは思ってもみなかった。