蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
・・・しかし。
慧に妹がいる、と知ったのは卓海が大学四年の時だった。
それまで、卓海は慧に妹がいることは全く知らなかった。
───大学四年のある日。
卓海は友人から、卓海が大学一年の時に叩きだしたデータベースの『最年少資格取得者』の記録が、一年の女に塗り替えられたということを知らされた。
それはデータベース技術者としての卓海のプライドを、少なからず傷つけた。
・・・一体どんな女なのか。
と気になった卓海は、その女のことを学務課で聞いてみた。
『あぁ、一年の秋月絢乃さんね』
学務課の女性職員はあっさりと教えてくれた。
そしてその名前を聞いた瞬間、卓海は慧の顔を思い出した。
そもそも、秋月という苗字の人間はさほど多くはない。
卓海は一年の授業が行われている講堂に赴き、授業が終わり生徒が出てくるのを待った。
・・・そして。
絢乃を見た瞬間、卓海は自分の勘が正しかったことを知った。
慧に似た面差しの、大きな黒い瞳の女。
卓海の周りに群がる女とは違う、理知的で清楚な雰囲気を湛えたその瞳。