蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・おや。姉ちゃん、なかなかの別嬪さんだね?」
「・・・」
オヤジかよ、と思いながら絢乃はひたすら顔を背けた。
・・・ていうか、どうしよう。
まさかこんな所でナンパされるとは・・・。
と思った、その時。
「・・・おれの女に何の用だ、貴様?」
物凄いドスの効いた声が、男の背後から響いた。
・・・見ると。
慧が、昏い刃のような鋭い視線で男を睨みつけている。
その射殺しそうな鋭い視線。
さきほどの少年ぽさなど微塵も感じさせない、大人の男の威嚇の視線。
絢乃は唖然と慧を見つめた。
・・・慧のこんな表情は、見たことがない。
なまじ顔が綺麗な分、その迫力は凄まじいものがある。
慧は男の前に歩み寄ると、目を細めてうっすらと嗤い、男を見下ろした。