蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・何の用だと聞いている。答えろ」
「・・・っ」
「用がないなら消えろ。今すぐにだ」
氷のような、その声。
・・・昏く鋭い刃のような、その視線。
男はひぃっと背を仰け反らせ、一目散に売店の方へと走り出した。
絢乃は驚きのあまり、目を見開いてその光景を見つめていた。
・・・信じられない。
と呆然とする絢乃に、慧はすぐにいつもの明るい表情に戻り、安心させるように笑った。
「ごめんね、アヤ。遅れちゃって」
「・・・」
「大丈夫? 今のヤツにヘンなことされてない?」