蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】



慧は首を傾げ、心配そうに絢乃を見る。

さきほどの鋭さなど微塵も感じさせない、その表情。

絢乃はしばらくぼうっと慧を見上げていたが、慌てて首を振った。


「う、うん。・・・大丈夫」

「そう? ・・・ならよかった」


慧はほっとしたように絢乃を見る。

・・・いつもと変わらない、その優しく穏やかな笑顔。

慧は絢乃の頭をぽんぽんと叩き、車の鍵を開けた。


「さ、車に乗ろうか、アヤ?」

「う、うん・・・」


< 161 / 438 >

この作品をシェア

pagetop