蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
慧は長い足を組み、テーブルの前で胡坐をかいた。
慧は今日は黒いジーンズに紺のポロシャツという格好だ。
朝、いつもの格好で行こうとしたのを、絢乃が無理やり着替えさせたのだ。
・・・正直、慧は何を着ても似合うのだが、さすがにあの格好で来ては祖母が驚いてしまう。
二人は出されたお茶を飲み、一服した後、客間の方へと向かった。
いつも祖母の家に来たときは一泊していくのだが、祖母はもう80を超えているので、布団の準備などは自分たちで行っている。
「掛け布団とシーツは押入れの上に、敷布団は下に入ってるからね。枕は上の押入れの奥に入ってるから、使うなら出しとくれ」
「はーい」
絢乃と慧は押入れから布団を出し、客間の隅に積み上げた。
祖母の家はさほど部屋数がないため、二人で一つの部屋を使うしかない。
・・・この年になって一緒の部屋で寝るというのはちょっと不自然ではあるが、小学校の頃までは慧と絢乃は家でもひとつの部屋を使っていた。
絢乃にとっては、それの延長のようで、少し懐かしい感じもする。
二人は布団を出した後、畳の間へと戻った。