蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
───夜。
二人は畳の間で、祖母が用意してくれた料理を楽しんでいた。
祖母の料理はどこか懐かしい味付けで、那須の地場野菜を使ったものが多い。
そして慧と初枝の前には、日本酒が入ったグラスが置かれている。
祖母の初枝は日本酒が好きで、二人が来るといつも台所の棚の奥から地酒の瓶を持ち出してくる。
絢乃はあまり日本酒が得意ではないので最初の乾杯だけだが、慧はお酒全般に強いので、いつも祖母の晩酌に付き合っている。
「・・・で、どうなんだい、お前の仕事は?」
「まあまあだね。とりあえず食べていけるぐらいには稼いでるよ」
慧は日本酒のグラスを傾けながら言う。
慧が個人事業主になった時、初枝は慧の将来をかなり心配していた。
・・・無理もない。
キャリア官僚になるはずだったのが、突然自営業の道を選んだのだ。
その原因は絢乃にあるのだが・・・。
うう、と思う絢乃の前で、初枝は笑いながら言う。
「そうかい。じゃあそろそろお前も、相手を見つけなければね?」
「・・・」
「お前の顔と頭なら、その辺を歩いてればすぐに見つかると思うんだけどねぇ」