蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
5.理由
───22:00。
入浴を終えた絢乃は、パジャマ姿で自分の布団に寝っ転がり、携帯を眺めていた。
「・・・・」
なぜか、卓海からメールが入っている。
『那須温泉饅頭を買ってこい』
・・・よくわからない指令だ。
というか個人携帯のアドレスは卓海に教えた覚えはないのだが、なぜこの携帯にメールが届くのか。
恐らく、会社の女子社員の誰かが教えたのだろうとは思うが・・・。
しかも卓海のアドレスも、会社のものではなく個人のものだ。
絢乃は首を傾げ、メールをまじまじと見た。
卓海は和食が好きだと言うが、お菓子も和菓子系が好きなのだろうか。
・・・別に興味はないが。
絢乃はぱたんと携帯を閉じた。
でも・・・
この間、卓海には中華を奢ってもらった。
その前の昼食も、拉致されてではあったが、奢ってもらったような気がする。
となれば、そのお礼と言うことで買って行ってもいいかもしれない。
・・・あくまでお礼として、だが。