蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】



<side.慧>



・・・障子の向こうが、うっすらと明るくなってくる。

慧はその長い睫毛を瞬かせ、そっと目を開けた。

鼻先に漂う、甘い香り・・・。

そして、胸元に触れる、温かい吐息・・・。


「・・・っ!!?」


慧は目を見開き、体を強張らせた。

・・・見ると。

絢乃が、自分の胸元で寝息を立てている。


シーツに散った、長く艶やかな黒髪。

髪から漂う、シャンプーの甘い香り・・・。

そして慧の胸に触れる吐息と、パジャマの襟元からのぞく白い肌。


化粧を落とした絢乃の素顔は、少女のようなあどけなさと大人の女の色気を漂わせている。

清純さと色っぽさが混ざった、その可愛らしい顔。

丸みを帯びた頬も、繊細な長い睫毛も、桜色の唇も・・・

その全てが、慧の目を奪って離さない。

───慧しか知らない、絢乃の素顔。


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