蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
本の間にノートのようなものを見つけ、慧は眉を上げた。
・・・色褪せ、黄ばんだノート。
慧は無造作にぱらっとそれをめくった。
どうやら・・・昔の日記のようだ。
慧はそれをぱらぱらとめくっていたが、やがて食い入るようにそれを見つめた。
これは・・・
母の、昌美の日記だ。
昌美は慧が3歳の時、病気で亡くなった。
そしてそのまま時世に引き取られたため、慧は母の面影は全く覚えていない。
慧は一ページ、また一ページとノートをめくっていた。
・・・が。
背後でガタッという音がし、慧ははっと身を強張らせた。
とっさにノートを本棚にしまい、振り返る。
・・・しかしそこには誰もいない。
どうやら縁側から入り込んだネコか何かが、廊下を走っていったらしい。
「・・・」
慧は物置部屋を出、障子を閉めた。
・・・あの日記の中身が、なぜか気になる。
けれど・・・母と言えど、日記を見るのはさすがに後ろめたい。
慧はひとつ息をついたあと、縁側を抜けて勝手場の方へと向かった。